IROGOTO(獄ツナ)






 聞いた瞬間、ツナは何ソレ?と思った。

「獄寺君のエロネタはオレじゃないんだって!」
 立腹するままに幼児にとんでもない事を言うツナだ。
 しかし十四歳以上に中味がとんでもない一歳児は
「なんで怒ってんだ、オメーは?」と相変わらず醒めた顔のままだった。




 なんて事ない、いつもの日常だった。学校の更衣室で体育の後の着替えをしていた時の事だ。
 男が三人集まれば猥談が始まる……訳はないのだが、いつのまにかそういう話になっていた。
 普段ツナはそういった話は苦手なので不参加なのだが、始まったのがいつのまにかなので、逃れるタイミングを逃してしまった。
 何をオカズにスルのか、という話になって皆好きな相手とかグラビアアイドルとかを上げていき、ツナもその場のノリで深夜テレビによく出る露出の多いアイドルの名前を上げた。
 もちろんツナのオカズは本当はそんなアイドルではなく、現在付き合っている相手……(実は同性)だった。

 ツナは現在獄寺と付き合っていた。
 ツナはずっと京子が好きだった。そして獄寺はツナが好きだった。
 獄寺はツナに対しては嘘をつけない男だった。獄寺のツナ大好き好きオーラは垂れ流しにされ、山本やリボーンはもちろん、ツナ本人にだってあからさまに分ってしまうあけ透けさだった。
 ツナは獄寺の気持ちを困ったなあと思っていた。
 獄寺は友達であって、ツナが好きなのは可愛い京子だ。獄寺は恐いし乱暴だし迷惑ばかりかけるしであまり好意的感情は湧かない相手だったし、第一男なので端から範疇外だった。
 ツナはごくごく普通の感性の持ち主だったので、獄寺の熱愛を迷惑だと思っていた。
 しかし獄寺はあからさまであったにも関わらずツナに見返りを求めずあくまで部下として接しようとしていたので、ツナもどうしていいか分からず、生来の面倒臭がりもあってとりあえず放っておいた。
 無責任であるが、ツナには元々負わなければならない責任など何一つない。だから気付かないフリをしていても罪悪感など湧きようがない。勝手に好きになった相手が悪いのである。
 だってツナは京子が好きだったし、だからといってそれは京子のせいではない。ツナが獄寺に片思いされたからといって同様に責任が生じるわけがないのだ。頭の回転が鈍いツナだってそれくらいの事は分った。
 獄寺はツナに自分の気持ちを気付かれているとは思っていなかった。馬鹿である。ただ一生懸命にツナの事だけを考え、ツナの為に戦い、ツナの為に怪我をして、ツナの為に格好悪い様を晒した。
 ツナの欠点は長所は同じ所にあった。
 順応性と妥協と諦めという所である。
 ツナは獄寺の存在に慣れていった。
 与えられる感情を嫌だとは思わなくなっていき、そしてツナはだんだんと獄寺にほだされていった。
 獄寺の粘り勝ちである。


 京子ちゃんが好きだったのになあ。

 相変わらず京子の事は好きだ。けど獄寺の事も好きになった。
 ツナは自分の気持ちに気付いた時に諦めた。
 何を諦めたのかといえば『獄寺を好きになった自分を認めず健全な道に戻る為に、逃げる』事をだ。
 ツナは諦める事に慣れすぎていた。
 ツナはマフィアになんかなるつもりはなかったが、リボーンはツナを半殺しにしても諦めない赤ん坊だった。
 ツナはリボーンの恐ろしさを肌で知ったので抵抗するという気持ちを放棄しつつあった。実力行使されればツナに逆らう手立てはない。
 ツナは物心ついた時から諦めるという事をしてきたので、恐い家庭教師の存在も鬱陶しい右腕ホモの存在も諦めた。
 だってその二人はツナの努力では排除できない相手なのだ。リボーンは口がうまいし母親をうまく丸めこんでいるし、獄寺がホモでツナ激ラブなんてどうして言えようか。ツナにだってそれなりの羞恥心はあるのだ。
 ツナは被害者だがこの場合被害者の方が恥ずかしい。獄寺はものすごく堂々としていて恥じる気持ちがひとかけらだってないのだから。
 ツナも獄寺に好かれるのも好きになるのもちょっと嫌だなあと思うくらいで、ものっすごく嫌だ! というわけではないので、らしからぬ努力をする面倒を早々に放棄してしまったのだ。
 獄寺も馬鹿だったがツナも同様に阿呆だった。似たもの同士である。
 ツナが自分の気持ちに抵抗できなかったのは自業自得だった。
 そんなこんなでツナは獄寺を好きだと認めた。
 獄寺は顔はいいし、頭はいいし、見た目だけならツナより何十倍も良いのだ。ツナは分不相応に面食いで、獄寺は男だが見ていて飽きない美貌だから獄寺の顔を見続ける事は全然苦にならないし、タバコの臭いは嫌いなのに獄寺からするタバコ臭は嫌ではない。
 自分の気持ちさえ認めてしまったら一気に楽になった。
 獄寺とは毎日学校で会う。学校がなくても獄寺は勝手に遊びに来る。
 好きな人と毎日会えるのは嬉しい。おまけに獄寺はツナを愛してしまっているので、ツナに好かれようと大事にして気を遣ってくれる。好きな人に好かれてちやほや大事にされるのはなんとも気持ちが良い。その方向性がとんでもない方向にいって大迷惑をかけられる事もよくあったが…。
 男同士でベタベタしていれば普通気持ちが悪いとかいわれそうなものだが、相手は獄寺だ。そんな噂話がちょっとでも耳に入ろうものならそのまま暴力沙汰になる。しかも獄寺は女子に人気が高い。顔が良くて頭も良くて喧嘩も強い粗暴な同級生をからかうクラスメートは皆無だった。(山本は別だが)
 ツナが京子を好きな事はクラス全員が知っていたので、獄寺はともかく、ツナまでもそうだとは思われなかった。
 ツナは京子と会話する時は頬を染めて照れながら話す。それはどう見ても片思いする男子中学生だった。
 だからツナの気持ちが今どこにあるか誰も気付かなかったのだ。


 獄寺とツナが付き合い始めたのは最近だ。
 獄寺はツナには通じないだろうなと思ってつい本心を告げてしまった。
 獄寺の「オレ、本当に十代目が好きなんです」という言葉にツナは「オレも獄寺君の事が好きだよ」と返した。
 獄寺は寂しそうな顔になる。
「違うんです。オレは……山本とかその他のヤツの『好き』とは違う『好き』なんスよ」
「どんな風に?」
「……迷惑だとは分ってるんスけど……十代目が笹川京子を好きなのと同じ意味で好きッス」
「オレもだよ。獄寺君」
「は?」
「オレは君が好きだよ」
「……あの?」
「……同じ事、二度も言わせないでよ」
「……はあ」
 ツナがあんまり普通だったので、獄寺はツナの言った意味を全然分っていなかった。
 分からなかったので考えた。一日中考えに考えて、夜に風呂に入って湯舟に浸かって今日も十代目は可愛い……もといシブかったな……と回想しながら、昼間にツナと交わした会話を牛の胃袋のように反芻して、確信がいきなりポン、と頭の中に浮かんだ。
 その後の獄寺の態度はいつも通りだった。
 いつも通り暴走した獄寺は日付けが変わる時間だというのにツナの家までやってきて、さすがにそんな時間に訪問するのは迷惑かなと家の前でハタと気がつき、しかしツナに確かめずにはおれなかったので、一言だけ聞こうと思って二階によじ登った。
 泥棒のような獄寺を発見したのは彼の姉ビアンキで、姉の姿を見た獄寺は二階から落ちた。
 獄寺は派手な音を立てた為に家人に気付かれてしまい、頭から血を流しながら恐縮して手当てを拒んで逆に叱られ、シュンとしてうるさいとリボーンに殺されかけ、今日は遅いから泊まっていきないさいと言われ、遠慮したけれど聞いてもらえず諾々と従いツナの隣に敷かれた布団の上にいて、そして獄寺の愛するツナはすぐ近くの自分のベッドにいて、そして二人は目が会って、獄寺は自分が沢田家にわざわざやってきた用事を思い出したのだ。
「十代目、十代目、あの……」
 昼間の「オレも同じ」は獄寺と同じ気持ちなのかと獄寺は聞こうとしたが、その後の『同じ事を二度言わせないで』とのツナのセリフも思い出し、聞くに聞けず目だけで訴える獄寺にツナはいつもの困ったなあという顔で、「おやすみ、獄寺君」と言ったのだ。
 それで曖昧になる筈だった二人の関係は、獄寺の無心に救われた。
 獄寺は「おやすみなさい」の代わりに「愛してます、十代目」と言ってしまい、ツナは赤くなってボソリと「オレもだよ」と言ったのだ。
 今度は獄寺は聞き逃さなかったし、同じ事を二度聞くような愚もおかさなかった。
 獄寺は信じられずに固まって、ただツナを見詰め、ツナは微妙な空気と羞恥に耐えられずにそっぽを向いた。
「じゅ、十代目……あの」
 獄寺が続けるはずだった甘ったるい恋人の確認は情け容赦ない家庭教師の
「うるせーぞオメーら。いい加減に寝やがれっ!」と不機嫌な抗議によって終幕した。リボーンの可愛らしい声には紛れもない殺気があって、二人は赤い顔を青くして速攻で寝たフリをしなければならなかった。
 獄寺はドキドキと心臓がなって結局一睡もできなかった。
 それ以後、二人は一応コイビト、という関係になっている。



「なのに、獄寺君のズリネタはオレじゃないってどういう事?!」
 ツナは叫ぶ。
 リボーンは聞きたかねえっ、という顔でエスプレッソを啜る。たったそれだけの疑問に長ぇ回想だなと乾燥剤よりドライな赤ん坊は思った。
 クラスメートとの猥談の際、獄寺の一人エッチの相手がツナでない事が判明したからだ。
 獄寺は女嫌で通っているのでそんな話は普段しない。獄寺がまともに会話するのはツナと山本だけだ。
 クラスメートは獄寺には恐くて聞けなかったが、ツナが「獄寺君はどんな女の人を想像してるの?」とツナが聞いた為、獄寺は答えないわけにはいかなかったのだ。
 ツナは獄寺が「じゅっ、十代目とはいえ、そんなの言えねえッス」とか「言わなくても分かるでしょ、意地悪言わないで下さい」と赤くなって言うと思ったのだ。
 ツナは結構自惚れていた。
 それなのに獄寺は「以前抱いた女ですかね」とごく普通に答えたのだ。
 これにはクラスメートもツナもビックリして言葉がなかった。エッチな事を言っても想像してもそれは童貞レベル。皆その程度だったのに獄寺は一人つきぬけていた。
 さすがの山本も「うわ、さりげなく言ったよコイツ」といつもの馬鹿笑いが出てこない。
 ツナは固まったまま帰路について、途中でやっと解凍されて獄寺に聞いたのだ。
 それまでツナと獄寺の間には重たい沈黙が流れていた。
「…………獄寺君て…………女の人と…………した事……あるんだ?」
「イタリアにいた時に」
「恋人がいたの?」
「いや………娼婦っス」
「娼婦……」
 単語は知っていても現実感薄い存在だ。けれど隣にいる獄寺にとってはそれが現実なのだ。
 ツナは急に獄寺を汚い物のように感じてしまった。
「お耳汚ししました。申し訳ないッス」
 そんな事はないよ、だってキミは何も悪い事はしてない……とツナは言うつもりだったのに。
「じゃあ……獄寺君はオレの事は考えないの?」
 言ってしまった。
 慌てる獄寺が見られると思ったのに。
「そんな事、絶対にしません」
「え……」
「十代目を汚すような事は絶対にしないッス」
 獄寺の顔は真摯で、ツナは獄寺との間に大きな谷が挟まっているような気がした。




「どうして? どうして? どうして? オレ達付き合ってるんじゃなかったの?」
 幼児に訴えるツナだ。
「獄寺の『好き』がツナの思ってた『好き』じゃなかっただけだろ?」
 リボーンの返答は容赦がない。
「そんなっ! そんな事今更言われたって困る!」
 獄寺がツナを好きだと思ったからツナも獄寺を好きになった。
 だがそうじゃなかったとしたら? 獄寺の好きは尊敬の好きだったとしたら?
 ツナの気持ちはもうクーリングオフできないのに。
 リボーンはやれやれと溜息を吐く。
「獄寺はツナよりも大人だからな」
「どういう意味だよ? セックスしてりゃあ大人なの?」
 セックスという単語が生々しくて吐きたくなるツナだ。
 獄寺がツナの知らない所でそんな事をしていたという事実が耐えられなかった。ツナと会う前の事だからツナには責める資格はない。愛のない行為だからといって不潔だと一蹴するのも間違っている。
 だがツナは獄寺が他人と肌を合わせた事実がたまらなく嫌なのだ。
「獄寺君はオレの事、好きじゃないのかな?」
 言って自傷するツナだ。
 リボーンの目は冷たい。
「オメーがそんなんだから獄寺は自制してんだよ」
「どういう意味?」
「ツナの『好き』が本当かどうか疑ってんのさ。ツナがいずれ過ちに気付いて獄寺への想いをなかった事にしちまう事を覚悟してんのさ。だからオメーに触らねえしキスもしねえ。抱くなんてとんでもねえ。一度でもヤっちまったら獄寺はツナを諦められねえ。自慰の時だって考えない。ひたすら諦める為の準備じゃねえか。全部がオメーの為だよ」
「なに…………それ……」
「聞かなきゃ分かんねえか? 獄寺はオメーを信じちゃいねえって事さ。ツナの気持ちを端から一過性のものと見てんだ。愛されてるのも一時的な感情だと思ってるのさ」
「そんな。……それじゃあオレは獄寺君にずっと疑い続けられてたってわけ? 酷いよ」
 ツナは憤慨したが冷たく黒い目にぶつかって語尾が消える。
「リボーン? オレが悪いっていうの?」
「部下を信じさせるのもボスの勤めだ。いわんや恋人だろ。疑うのはツナがそうさせてんだ。何処が悪いか自分で考えて反省しろや」
 優しくない家庭教師はそう言った。
「オレが獄寺君にそうさせている?」
 考えても分からないツナだ。
「ない頭使って考えな。でないと大事なモン無くしちまうぜ」
「リボーン」
 ツナは唇を噛んだ。人を見る目を持っているリボーンがそう言うのだからそうなのだろう。
 ツナは考えた。けれど自分の何処が悪いのか分からない。いたらないところならいくらあげてもキリがない。頭が悪くて運動神経がなくて顔も並で根性も平均以下で良い所は一つあるか全然ないかの最低レベル。
 でもリボーンのいう『駄目なところ』はそういう部分ではないだろう。
 リボーンは信じない獄寺よりも、信じさせないツナが悪いと言った。でもいくら考えても分からないのだ。
「好きだ」って言うだけじゃダメならどうしたらいい?
 ツナは怒ってリボーンに八つ当たりをする。
「リボーンは……オレと獄寺君がどうにかなってもいいのかよ?」
 マフィアには跡目が必要だ。しかし獄寺とツナの組み合わせでは無理だ。となると将来困る事になる。
「まあ、その辺は後でどうにでもなるしな。人工受精でも脅迫でも道はいくらでもある」
 物騒な事を平気で言う。
「男同士だからって別れさせられるかと思ったのに…」
「ヤツはヘタレくさいが、実務能力に長けている。部下を掌握するのは力と頭がいる。部下の心を掴んで、さらにそれを動かすのはボスの役目だが、ツナは心は掴めても人を具体的には動かせねえ。ボスの右腕として獄寺の優秀さは欠かせねえ」
「結局ボンゴレの為かよ……」
「オレがそれ以外の目的で動くとでも?」
「オマエはそういうヤツだよな」
 ツナはとりあえず別れを強要されなくて良かったと思うしかなかった。
 リボーンがそこまで獄寺をかっているとは思わなかった。
「ボスの為につくして見返りを求めず忠誠心は人一倍で勤勉で働くのを苦にせず、しかも能力がある。捨てるのは惜しい。エサは金でも地位でもなくてボス一人。ツナが足開いて可愛がってやれば右腕は死ぬまでツナの為に尽くすさ」
「あ……足開くって……」
「ツナの言うネタってそういう事だろうが。ンな事も想像しないで何怒ってんだ。足開いて獄寺のを突っ込まれる覚悟をしてから怒りやがれ。させる気もねえのに怒るなんておこがましいぞ」
「うぎゃーっ! そんなリアルな事言うな! 想像もした事ないよっ!」
「そんなんだから獄寺はオメーが信じられねえんだ」
「うっ……」
 リボーンの冷静な指摘にグウの音も出てこない。セックスだけが恋愛ではないが、将来はそういっていられない。身体は既に第二次成長期を迎えている。恋人がいれば、いずれセックスしたいと思うようになるだろう。それは自然な流れで咎められるような事ではない。
「ケツに入れられるのはイテエらしいぞ」
「だから具体的に言うなって!」
「他人にケツの穴見られる覚悟はあるのか?」
「ないよ! ケツケツって言うなよ!」
「誤魔化しても何一つ事実は変わらないぞ」
「オレの受け止め方が変わるんだよ!」
 ツナは叫んだ。
 いったい何の話をしているのだか。
 切ない恋の愚痴を零していただけなのに、いつのまにかセックス談義になったのか。リボーンは相変わらず容赦がない。
「お前が獄寺に突っ込むという選択肢もあるが」
「止めてよ! 考えられないよ!」
 それこそ問題外だった。自分が獄寺に? 無理に決ってるだろコンチクショー。
「じゃあ突っ込まれる事考えとけ。痛ぇのが嫌ならボンゴレにはそれなりの拡張道具とか揃ってるから」
「そんなものまであるのかよ? どんなマフィアだ?」
「性産業は大事な収入源だからな」
「聞きたくねーーっ!」
「大丈夫。初めは細小サイズからいくから」
「使う気ねえって!」
「じゃあバージンで獄寺とすんのか。獄寺も後ろの経験はないだろ。初めて同士かよ。勇気あるな」
「そんなの勇気じゃねえっ。つか、入れる入れないとか言うなよ。プラトニックとかの選択肢はないのか?」
「あるわけないだろ。そんなマフィアどこにいる? 普通の男だってヤらせねえ女にいつまでくっついてるもんか。世の中には優しくてやらせてくれる女がいくらでもいるっていいうのに。プラトニックを主張すんのはインポか神父くらいだ。お前だってもし獄寺じゃなくそこいら辺の女を好きになったとして、大人になった時に一生プラトニックでいましょうって言われて我慢できるか? 出来るわけねえ。それが男ってもんだ」
「…………そりゃそうだけど」
「ツナはまだ未熟だ。ヒヨコどころか殻からも出られてねえ。そんなんじゃ好きになったヤツだって傷つけるだけだ」
 リボーンの言う事はもっともで、ツナには反論できない。
「もっと精進しろや」
「分ってるよ」
「逃げんじゃねえぞ、獄寺からも自分からも」
 リボーンは家庭教師らしく、できの悪い教え子に命令した。



 その後、イタリアから木箱に入った色とりどりの大人の玩具が届き、ツナの大絶叫が沢田家の二階で響いた。
「あー、ツナ何それオモチャ? ランボさんに貸して」というランボに青くなったツナだったが、ちょうど遊びに来た獄寺が「アホ牛、十代目に迷惑かけんな!」と容赦のないボムをぶつけてランボの目は誤魔化せた。
 いつものツナならば「なんて事をするんだ、獄寺君!」と獄寺の乱暴さを叱るのだが、今回ばかりは内心で感謝したくらいだ。
 どうせランボはそのくらいでは死なない。リボーンほどではないがランボは五歳児とは思えぬ丈夫さだ。撃たれても爆破されてもすぐにケロリとしているところはゾンビなみ。
 だからまあ大丈夫だろうと気軽に考えるツナだ。
 ツナは結構酷い。
「あれ、十代目ソレなんスか?」と獄寺に箱を覗かれそになったツナは思わず「ダメッ!、おすわり!」と獄寺に命令を下してしまい、獄寺も反射的にツナの前で正座になる。
 うわ、俺今獄寺君を犬扱いした?
 ツナは焦ったが獄寺が真面目な顔でツナの命令を待っているので今更冗談でしたとは言えず、引っ込みがつかなくなってしまった。
 それを見ていたがリボーンがニヤリと一言いった。
「家畜プレイか。……ツナのヤツ、ヤルじゃねえか」
「そんな……照れるッス」
 獄寺の照れた顔にツナは
「そんなんじゃないよーっ! キミも照れるなーっ!」と叫んだが、ツナの心からの叫びは当然のように二人には届かなかった。 









オチがない話だ……                     第三者の立場から見た二人は?