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 ギチギチと締め付ける肉の入口を広げ捏ねるように抜差ししながら進む感触はアメリカの征服欲を満たした。
 自分の欲望がイギリスの奇麗だと見蕩れた場所にぐっさりと刺さっている様は至福というより奇蹟だった。今まで何百回とその瞬間を想像してきたが、幾度となく思い描いた甘さはなく甘美というより締め付けられてきつく痛い。しかしそれが現実的で痛みが快感と興奮に替わり頭の後ろが痺れた。
 アメリカの竿は長過ぎてイギリスの奥に入りきらず途中で止まってしまう。
 ヒッ、ヒッ、と浅い息を吐き出しながら悲鳴を上げて泣くイギリスに、アメリカはこのままでは壊してしまうのではないかという恐れと、いっそ壊れてしまえば永久に自分の腕の中から出ていかないのではという凶悪な考えにとり憑かれる。
 ローションのぬめりのおかげで動くのは思ったより楽だった。イギリスの中はとにかく狭く、まるで処女だと思ったがそもそも初めてなので比べようがない。
 動くたびにぬちゃぬちゃと液体が溢れる音と、イギリスの悲鳴と混じってアメリカは一気にのぼせた。頭に血が昇ってとにかく熱い。腰を動かして摩擦運動をする事しか考えられない。腰の動きが止まらない。

「アメ…リカ…………痛っ……痛い、動く……な…………あうっ、ひっーっ……う…ぐぅ……」

 アメリカのカリがイギリスの内部をゴリゴリと削るように擦り、限界まで突っ込まれる苦しさに、イギリスはあられも無く泣いて痛みを訴えた。
 アメリカが慣らしたのは入口だけで、奥はまったく拓かれていなかった。
 狭い普段は閉じた道が太い棒で割り拓かれていくのだから、受ける側はたまらない。
 せめてもっとゆっくり挿入されたら、苦痛も軽減されただろうが所詮は初心者。理論は知っていても身体は本能に振り回される。ローションはたっぷり注がれているし、イギリスは過去に男性経験がある。リラックスして受入れる事ができれば共に快感は得られるはずだが、初めてのアメリカにそんな余裕はない。飢えた獣が肉を食むように、己の快感のみを優先しイギリスの中を蹂躙するしかない。
 睾丸同士がつくくらい奥を突かれ、引いては突っ込む腰つきに、イギリスの限界はとうにきている。
 アメリカが奥まで突く度に口から胃が飛び出しそうになる。あまりの苦しさに息もろくに吸えず、ハッハッと犬のような息を吐き出した。
 両手は枕を掴んで顔と手で上半身を支えている状態だ。
 逃げようにも足に力が入らない。泣きたいくらい痛くて苦しい。

「いぎりす、いぎりす、好き、好きなんだぞ。君はオレのモノだ…」

 グチャグチャと接合部が淫猥な音を立てる。
 その摩擦熱とひどい異物感にイギリスは堪えられず声をあげた。

「ひやっ、う…あん…………いや、いや、死ぬ、死んじゃう……くるしっ……もう、動くな…ぁ…」

 アメリカもイギリスも自分の事で手一杯で、お互いがどうなっているかなんて蚊帳の外だ。
 アメリカは初めて入る他人の内側の感触に溺れこみ、イギリスは他人に征服される苦痛に咽び泣いている。
 突かれるより身体を引かれる方が辛くて、内臓まで一緒に引張り出されそうな恐怖にイギリスは尻に力を入れ、さらに感じた苦痛にのけぞって痛みにブルブル震える。
 アメリカのペニスは長い。
 ずるうっ、と引き抜かれる感触にアヌスが違和感を訴える。排泄感に似た感覚と押し込まれる圧迫感。アメリカが奥まで入ると胃を持ち上げられるような感覚に吐き気がした。 しかしそれは些細な苦痛だ。イギリスははっはっと犬のように呼吸して、アメリカに擦られる痛みに耐えている。
 イギリスの下の口は限界まで広げられ、乱暴な動きに僅かに血が滲み始めている。そこまで太いモノを飲み込んだ事がないイギリスは、アメリカの大きさに慣れず苦しむ。
 はふはふと息を吐き出し、喉の奥で悲鳴を噛み殺す。ヌチャヌチャ音を立てる下半身の理由を知りたくないと耳を塞ぎたい衝動にかられるが、とにかく苦痛を減らしたかった。
 他人に征服されるのがこんなに苦しいとは思わなかった。
 アメリカには余裕がない。行為を楽しむという娯楽性はない。飢えた狼のようにイギリスという獲物を貪っている。
 抉るように突いているアメリカに、イギリスは変わってしまった関係に涙した。
 イギリスの弟はもう何処にもいない。イギリスの後ろにいるのはもう他人なのだ。一人の男になったアメリカがイギリスを食っている。
 アメリカの方もコントロールできない欲求にもうどうしていいか分からなかった。

「いや、痛い、アメリカ。もうやめてくれ、耐えられない……」…と泣くのをこっちの方が限界だ耐えられないと、放出の欲求を耐え続けているのだ。
 このまますぐにでも出してしまいたい。
 だがイッてしまえば終る。出したくない。もっと快感を引き延ばしたい。初めては一度しかない。出せば終ってしまう。そう考えると勿体なくて終らせる事ができない。
 イギリスの方も限界なのは分かっている。弱々しく、食われかけた兎のような痛々しさにアメリカは憐憫とどうしようもない愉悦を感じる。
 兄を犯しているという背徳感が興奮になる。禁忌の味というのはどうしてこうとろけるように甘美なのだろう。






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