24



 アメリカはイギリスの本気の焦りに手を外し、自分のジーンズと下着を一気にずり下げた。
 ピョンと目の前に飛び出した肉棒に、イギリスは目を剥いた。
 圧巻、というのだろうか。太いだけではなく根元からカリまで長さがある。使い込んでいないから色はまだ薄いが、そんな事で凶暴さが減るわけがない。茎には血管が浮かび、生々しさが強調されグロテスクで凶暴だった。

「アメリカ、無理だ。こんなん入るわけない。ちょっと考えれば入らない事くらい分かるはずだ。もう止めてくれ」
「経験がないから分からない」
「この童貞!」

 イギリスはアメリカの手が離れた隙を狙って逃げようと考えたが、素っ裸で外に飛び出すわけにはいかないから、逃げる時に下を持って逃げなければならない。
 考えた時間が命取りだった。

「無理なら入るようにイギリスの孔を広げればいいんだよね。頑張るよ」
「ちょっ…」

 またも身体を反転させられ、拡げた足の間にアメリカの身体が入る。
 アメリカの手が尻たぶをひろげ、イギリスの秘められた場所を曝け出した。

「イギリス。ここ、自分で見た事があるかい?」
「……っるかよっ。オレはそこまで変態じゃねえ」
「すっごく奇麗だよ。肌の色そのままで白くて、キュッと窄まって花の蕾みたいだ」

 アメリカの明け透けな説明にイギリスの頬が熱くなる。そんな場所は自分でも見た事がない。
 確かに男と寝た時に本当に経験があるのかと疑問を持たれた事もある。経験者のアナルがこんなに奇麗に窄まっているわけがないとか……。
 そんな事どうでもいいと思ったが、アメリカはイギリスのアナルを見て喜んでいるらしい。男が男の尻の孔を見て喜ぶなんてどうかしているが、今の状況も常軌を逸しているからもう何処から何処までがおかしいのか分からない。とにかくイギリスは瀬戸際だった。何かの。
 エロ大使の異名をいただいて数年。男女のあれやそれもやりつくし、裸エプロンも何なくこなし、どんな立場に置かれようと動じない経験は積んだつもりだが、弟とのアレコレに対するスキルのマニュアルはなく、つまりどうしていいか分からない。
 やる気満々の息子を一撃すれば勝敗は一瞬だ。ギンギンの男など隙だらけでイギリスの敵ではないが、同じ男だけにいきり立ったアレを攻撃される痛みも想定できて手が鈍る。
 隣国ならともかく相手は長年愛してきたアメリカで、イギリスの為に童貞を守ってきた意外なピュアっこだ。
 しかし童貞を貰える喜びも、アメリカの元気すぎる規格外のペニスを見た後では気持ちが萎える。イギリスにMの気はなく、つまり痛いのは嫌だった。セックスは気持ちよくてなんぼだ。痛いだけならする意味はない。殴る蹴るくらいなら我慢できても、内臓への直接攻撃は耐えられない。
 しかしアメリカはやる気満々の臨戦態勢だ。イギリスが心を鬼にしてアメリカの股間を殴りつけるか、イギリスがぶっ挿されて壊れてしまうか。
 つ…とシワを指先で撫でられてイギリスの身体がビクリと震える。

「イギリス。……あんまり使ってないようで良かった」
「だから、しみじみ感想を言うんじゃねえよ、このMKY!」

 イギリスはやっぱり殴ろうと思った。後悔するのはヤッた後でいい。今はとにかく逃げないと貞操の危機だ。

「…ってえぇぇっ!」

 イギリスは叫んだ。再びアメリカが指を入れようとしたらしいが、イギリスのソコは頑に窄まって異物の侵入を拒み通す。

「イギリス、力を抜いてくれよ」
「できるかっ」

 力を抜いた途端に指は無理矢理肉をかき分けようと強引に進むだろう。濡れていない乾いた場所を異物で擦られたら傷つく。痛みを想像して、イギリスは怯えた。

「バカ、痛いったら。このドヘタクソッ! 何もつけずに入るわけないだろっ」
「喚かないでくれよイギリス。……濡れればいいんだね」

 アメリカはニヤリと笑うと、顔をイギリスの尻に近付けた。

「おいっ…」

 まさかとイギリスが思うまもなく、アメリカの唇がイギリスの後ろに触る。

「ひやっ…」

 レロッと舐められ、イギリスの背が柳の枝のようにしなる。

「アメッ……お前っ………ダメだ!」

 悲鳴のような声を上げてイギリスは身体を激しく捩った。口での愛撫の経験はあるが、相手がアメリカとなると心の方が耐えられない。小さい頃から可愛がった弟に尻の孔を舐められるなど、あってはならない事だ。






 →25


 novel top