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過去のアメリカと今のアメリカがうまく繋がらず、イギリスは知らない他人に襲われている気持ちになったが、顔を見れば間違いなくアメリカで、もう何がなんだか分からない。
分かるのは逃げなければならないという事だけだが、名前を呼ばれながら性的興奮をぶつけられ、逃げる事も叶わず混乱でいっぱいだ。
熱い欲望の形状を尻に感じる。
アメリカのペニスがイギリスの身体によって硬くなるなどありえないのに、ありえてしまった現実に、イギリスは泣きそうになる。
「ひやっ…………止めろって……そんなとこ触るなっ…うわっ……やだっ……アメリカッ……」
「イギリス、イギリス。君は俺のモノなんだぞ」
イギリスの身体は反応していた。鳥肌が立っているのは心が拒絶しているからだが、男の本能は刺激に忠実だった。ペニスを上下に擦られ鈴口に爪を立てられて抵抗できる男はいない。
硬く芯を持ったイギリスのペニスにアメリカの情欲は増々掻き立てられる。
弾力ある手応えに、アメリカは煽られた。
アメリカの手の中でイギリスが反応している事が喜びだった。ずっとこうしたかったのだ。
同性の性器を弄っているという拒否感はない。ただただ興奮した。
兄であり母であり、長年の片恋の相手だという認識が背徳感と相まって脳を揺さぶり、冷静さを欠き、息が荒くなる。
イギリスの身体を反転させ涙を浮かべた顔を見ようとするが、イギリスは抵抗して両手で顔を隠してしまう。
嫌がられて、拒絶に腹が立った。愛を拒まれているようで苦しくなる。
無理矢理手をどけ、感じているイギリスを見たかったが、アメリカの方にも余裕がない。
諦めて赤く腫れている乳首に吸い付き、舌で押し、こねくりまわす。
ちゅるちゅると舐めれば、イギリスの身体はビクビクと震えた。明確な反応に気を良くし、更に舌で舐めまわす。
「イギリス、イギリス…」
やりたくてやりたくてたまらなかった事を今しているという興奮がアメリカを駆り立てた。
これはもうアメリカだけの獲物だ。食いつくす事しか考えられなかった。
胸に幾つもの赤を散らせながら唇を下に下げる。
勢いよく吸われる肌にイギリスは苦痛の息を飲む。強く吸い上げられれば感じるのは快感ではなく痛みだ。
のけぞって暴れてもアメリカの手はがっちりとイギリスの腰を固定して、下半身はまるで自由にならない。
イギリスは必死に首を振る。
「駄目、駄目だ、アメリカ、頼むから離してくれっ。俺はお前と寝たくないっ。こんなのはセックスじゃねえ、ただの強姦だ。お前は強姦魔と呼ばれたいのかよっ」
「俺は君が好きなだけだ。俺をこんなにしたのは君だ」
顔を上げたアメリカの目は性的興奮に血走っていたが、その瞳の中に泣くのを我慢する幼子が見え隠れし、イギリスは突然思い出した。
『いぎりちゅ。かえっちゃヤなんだぞ。オレもつれてって。ひとりはさみしいよ』
泣く幼子を振り切って帰ったのはイギリスだ。会えない時間がアメリカの独立心を育てたのだとすれば、アメリカの独立はイギリスにも責任がある。
あの幼子が成長してイギリスを求めている。
改めて自分の身体を見ると、半裸の身体にアメリカがかじり付いている凄い光景が見えた。
美しくも柔らかくもない身体の何処に魅力があるのか、イギリスはアメリカの興奮が不思議だった。何処にでもいる普通の男の身体だ。体毛は薄いが、ちゃんと手足に毛は生えてるし、足の間には竿と袋がぶら下がっている。なのに。
ゲイでもないのに、アメリカはどうしようもなくイギリスの身体に興奮していた。
「なんで……なんでそんなにオレがいいんだ。オレは奇麗でも可愛くもない普通の男だぞ。ゲイでもないくせに……」
イギリスのせいで、アメリカが未経験だという事を思い出した。
青い目が捕獲者の光を浮かべて、イギリスを突き刺さす。
「男でも女でもどっちでもいいよ。イギリスなら。……君がどうして好きかなんてオレにだって分からない。だけどこの胸の痛みは恋だ」
「アメリカ…」
「オレを受入れてくれ、イギリス」
「駄目だ……アメリカ」
「どうして駄目なんだっ!」
「どうしても、だ」
だがイギリスの抵抗は弱まった。アメリカの本気を感じれば感じるほど、イギリスの心は二つに別れる。
このまま流されて受入れてしまえという打算と欲望、アメリカを家族として愛してきた思い出を穢したくないという思い。
裏切られてもそれでもやはりアメリカは家族だ。
アメリカは絶対に引くつもりはないらしいから、このまま勢いに流されてもイギリスのせいではない。アメリカがそう望み強引に関係を進めたのだという言い訳ができる。
「イギリス。オレのモノになって。もう我慢できない」
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