第一章
幸せになりたい。
そう願っているのに、どうしたら幸福になれるか判らない。
いいや。優先されるのは自分ではない。
自分が守るべき者達の幸福が先だ。
彼らを守ってこそエドワードの幸福は成り立つ。
かあさん、アルフォンス。……大事な母と弟。
大切な事は分かっている。自分がすべき事も分っている。
分かっていながら、自分の行く先が見えずに戸惑っている。
恐怖しているといってもいい。正直怖い。
エドワードの知る未来は十五歳で止まっている。
それから先は濃霧の向こう側にある。
エドワードは今霧の中を歩いている。先が見えない。どちらに行けばいいか分らない。
分らないが、前に進み続ければどこかに辿り着く。
エドワードは立ち止まる事ができない。
なぜなら背後の道はもう断たれている。
エドワードの道は前にしかない。だから進むしかない。行き着く先が、例え道なき断崖絶壁でも、エドワードは進み続けるしかない。
エドワードは何故自分が前に進んでいるのか判らない。
迷ったのなら立ち止まって何もしない事も選択肢の一つだ。
だが足を止める事は怖い。
間に合わないかもしれない、その事が怖い。自分にできる事があるのに何もせずに終わる事が怖い。
怖くて、怖くて。
エドワードは足を止める事ができない。
そんなエドワードの背を心配そうに見ているいくつもの目がある事にも気付かず、エドワードは歩き続ける。
自分が孤独だと信じて。
足の下がイバラの道だと思い込み。
自分が不幸と思わず、知らず、絶望と希望を両手に携えて。
エドワードの目の前は霧の道。
エドワードの行き着く先にあるものは…………未だ見えず。
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