公爵夫人秘密 01
Alphonse×Edward♀


プロローグ




「エドワード…………お願い…………」

 母さんが最期に望んだ事。

「…………どうかあの人の元に…………」

 例えそれが自分の望みとは反していても。

「連れて行って…………」

 それがどんな結果を生んだとしても。

「お願いよ、エドワード」

 伸ばされた白い指。

 いつの間にかこんなに細くなっていたなんて。

 おかあさん。

 自分は望みを叶えずにはいられないだろう。

 それが幸薄かった母の最期の望みなのだから。

 娘に何も望まなかった母の最初で最後の望みなのだから。

 そんな願いなんて叶えたくないと思っても。

 おかあさん。

 それが最後にオレにくれた言葉。

 そんな言葉欲しくない。聞きたくないよ。

 おかあさん、死なないで。

 やつれた面影にもう生きる力はない。

「判ったよ。母さん。絶対に…………叶えるから」

 母の小さい手を握りしめて誓った。

 母さんが安心したように笑った。

 ああ…………。

 こんなちっぽけな約束であなたは笑えるんだね。

 見たいと思っていたあなたの笑顔が胸に痛い。

 あなたが願うならどんな事でも叶えるだろう。

 そうする事でしか愛してると伝えられない。

 だから願って。望みを叶えるから。

 例えあなたがいなくてもオレはあなたの為に生きよう。

 そしてオレは故郷をあとにした。





Alphonse×Edward♀

公爵夫人の秘密