「エドワード…………お願い…………」
母さんが最期に望んだ事。
「…………どうかあの人の元に…………」
例えそれが自分の望みとは反していても。
「連れて行って…………」
それがどんな結果を生んだとしても。
「お願いよ、エドワード」
伸ばされた白い指。
いつの間にかこんなに細くなっていたなんて。
おかあさん。
自分は望みを叶えずにはいられないだろう。
それが幸薄かった母の最期の望みなのだから。
娘に何も望まなかった母の最初で最後の望みなのだから。
そんな願いなんて叶えたくないと思っても。
おかあさん。
それが最後にオレにくれた言葉。
そんな言葉欲しくない。聞きたくないよ。
おかあさん、死なないで。
やつれた面影にもう生きる力はない。
「判ったよ。母さん。絶対に…………叶えるから」
母の小さい手を握りしめて誓った。
母さんが安心したように笑った。
ああ…………。
こんなちっぽけな約束であなたは笑えるんだね。
見たいと思っていたあなたの笑顔が胸に痛い。
あなたが願うならどんな事でも叶えるだろう。
そうする事でしか愛してると伝えられない。
だから願って。望みを叶えるから。
例えあなたがいなくてもオレはあなたの為に生きよう。
そしてオレは故郷をあとにした。
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