お義兄さんがハイスペックすぎて倒せない!(紫氷)

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□紫氷で、火←黒です
□氷室と火神が和解、両ブラコン
□紫原が氷室に片思い、黒子が火神に片思い中
□氷室がエレガントヤンキー……でも天然エロカワ処女
□火神はただの天使






 僕こと黒子テツヤは絶賛不機嫌中です。顔には出てないけれど。
 他人様にはよく無表情コワイと言われます。解せぬ。
 ビコーズ。




「ははは。タツヤ。お代りいるか?」
「勿論だよタイガ。おまえの作るディナーは久しぶりだ。いくらでも入る」
「遠慮せずに食べてくれ。タツヤが来るから沢山作ったんだ」
「そんな事言うなら本当に遠慮しないぞ」

 …と言ったイケメン様は現在三杯目をお代り中です。細身のわりによく食べる人です。さすが深長百八十センチ越え。(羨ましくなんかないっ。……嘘です羨ましいです羨望ですギリィッ)

「ほら、黒子もお代りするか? おまえ全然食ってねえじゃんか。皿よこせ」
「……お気持ちだけで結構です。ありがとうございます火神くん」
「Oh! もしかして俺が食べ過ぎたから黒子くんの分が無くなっちゃったのかい? Sorry」

 しょぼんとなる美形様はしょげても美形のままです目の保養ですありがとうございます。
 僕の火神君が美しい義兄に見とれながら慌ててます。
 うらやまシットォォッです。美しいお義兄さんに甘えればばいいのかジェラしればいいのか迷い中です内面大忙しです。

「大丈夫。まだちゃんと黒子の分は残ってる。タツヤが来るからいっぱい作ったんだ。だから遠慮せずお代りしろ。黒子もタツヤも今さら遠慮なんかすんなよ水くせえ」
「ありがとうタイガ」
「ありがとうございます火神君。優しい君に感謝ですが、お願いですからお皿返して下さい」

 さすが僕の天使。あざと可愛いですペロペロ。
 恐縮のところ悪いのですが本当にお腹いっぱいです。僕の軟弱な胃腸がギブアップだと床を叩いてます。
 僕の心のマイハニーでエンジェルで光の火神君の作った最高に美味しいビーフシチューなので鍋一杯一人占めしたいところなのですが……心情に反して僕の胃はお皿一杯分しか入る容量がなく……というかこの人達、一体身体のどこに大量の米とシチューを入れているのでしょう。
 もしかして牛みたいに胃が複数あるんですか? そうなんですか?
 マジパでバーガー二十個も食べるのはそういうわけなんですか?
 火神君は牛みたいに反芻するんですか?
 食べて胃から戻し、はんすーはんすーですか?
 凄いですね。もし火神君が牛だったとしても僕の気持ちは変わりませんどんな君でも愛し抜く事を誓います。ええ、一生牛肉は食べないと誓いましょう。僕はマジパのシェイクさえあれば他には何もいりませんから。
 火神君の大食には慣れていますが、まさか彼の兄(血の繋がりはない)までも牛の胃袋持ちだったとは意外でした。
 見た目エレガントな美青年なのに食事の仕方は豪快で男らしいです。
 しかし顔面偏差値最高値というのは反則ですね。どんなにがっついて食べていても美しいんです。全然下品に見えません。反則です。イケメンの大食いってズルイです。
 そう思ってるのは僕だけじゃないみたいで、腹立たしい事に僕の愛しい火神君はイケメン様をうっとり見てます。
 なんですか僕を嫉妬させたいんですかええ勿論嫉妬の炎メラメラ燃え盛ってます。イケメン爆ぜろ。
 火神君は目の前でビーフシチューをかっこんでいる男にでっれでれですヤニ下がってます男にデレるなんてホモですか君はいいんですよホモでも相手が僕なら。
 しかし火神君の目に映るのは僕ではなく、ずっと仲違いしていた彼の心の兄こと氷室辰也さんです。
 秋田の高校にいるはずの彼がなぜ東京の火神君の家にいるかというと、僕のせいかもしれません。いえはっきり僕のせいです。自業自得なので猛反省中です。






「タイガ、料理の腕があがったな」
「そ、そうかな。親父がアメリカに残って、毎日料理してるからかな」
「タイガは偉いな。本当に……随分しっかりしたんだな。これならおじさんも安心して家を任せられる。あの可愛いタイガがな。ふふふ」
「いつまで子供扱いすんな。今じゃタツヤよりも家事はうまいんだぜ」
「言ってろ、不肖の弟め」
「メシマズの兄貴にだけは言われたくねえよ」
「昔、喜んで俺の作ったパンケーキ頬張ってたの誰だ?」
「俺だよ。腹減ってたんだよ。あのパンケーキ、裏真っ黒だったぜ」
「え、そうだったのか?」
「大丈夫。腹減ってたからなんとか食えたぜ」
「タイガの胃が丈夫で良かった…」
「今度、とびっきりうまいパンケーキ作ってやるからな」
「楽しみにしてるよ」
「おう、まかせとけ」

 この人達、食べたばかりなのにもう食べる話ですか。ゲップが出そうです。
 これが兄弟の気安さですか。火神君が氷室さんを兄貴だというのがなんとなく分かりました。ただ向かい合ってゴハンを食べているだけなのに、友達同士で食べているのとは違う、身内ならではの親密さが感じられます。理屈でない気安さというか、例え会話がなくても全然気まずくならない空気だとかそういったものです。
 僕もいつかはこんな空気を火神君と持てるんでしょうか。問題は山積みです。

「タツヤはどんなトッピングが好きなんだ? ハニーとチョコレート? それとも生クリームとジャム?」
「タイガの作るものなら何でもいい」
「明日のおやつに焼くよ。メープルシロップいっぱいかけようぜ」
「Wow! 素敵だ。……ふふふ。写真にとってアツシに自慢してやろう。『美味しいオヤツなう』って。……こっちじゃ現在進行形の行動を『なう』って言うってクラスメイトに教えてもらったんだけど、こういう使い方で良かったのかな?」
「タツヤもずいぶん日本に馴染んできたんだな。写真にとるのはいいけど、紫原に連絡するのは無しだぜ」
「Why?」
「あいつなんか気にイラネーし」
「アツシもタイガの事をそう言うよ。お前達気が合うな」
「あわねえよ!」

 どうやら氷室さんは天然かボケ属性の人のようです。可愛コぶった演技かと思いましたが、まさかの天然ですか。
 美人で天然ってどんだけスペック盛るつもりですかこの人。
 火神君が氷室さんにメロメロなのが分かります。こんな人が側にいたら誰だって目で追ってしまいます。何せ氷室さんはあのお菓子しか興味のなかった森の妖精トトロ……じゃない紫原君を落とした最強のビッチ……げふんげふんエロかわ処女です、純情な火神君くんなんかイチコロです敵は強大です。色気だだ漏れ雨漏り浸水びっちょりなのに、実はビッチじゃなくて天然処女美人なんて……なんてエロゲですか? シャララわんこだってそんなに盛ってませんよ設定。

 僕なんでここにいるんですか、お邪魔虫ですか、僕いらないですよね。
 でも二人っきりになんかしてあげません。そんなデンジャラスな事阻止です。危険な情事だって奥さんのいないうちに起こった事じゃないですか油断大敵です。氷室さんの色気にうっかり火神君が負けたらどうするんですか。