Change The World
(バサ雁)




□転生パロ
□第四次聖杯戦争メンバーが主(記憶持ち)
□バサ雁メインで中の人バレ
□セイバー(アルトリア)とランスロットは親友設定
□雁夜と龍ちゃんはお友達(雁夜は龍之介が元・殺人鬼だって知ってるヨ)
□龍ちゃんは殺人鬼の記憶あり。今はただの高校生
□キャスター組はラブラブ





■sample/01■

「ふんふふ〜〜ん。新入生、可愛いコいるかなあ」
 機嫌良く芯の入ってない足どりで隣を歩くこいつは雨生龍之介。見た目可愛い系のチャラ男。オレのダチでクラスメート。去年も同じクラスだった。中学からのダチだ。気が合ってずっとつるんでいる。
 龍之介は名前は古風だが、外見はちょっと甘めの今どき風ファニーフェイス。女子ならジャニ系とでも言うかね。
 一見頼りなさそうなイケメンって感じだけど、色々あって女子にはモテないし、男子の友達も少ない。
 悪いやつじゃないんだけど……と言い切れないのが悲しい。龍之介は複雑な事情がある、面倒臭い男だ。
 龍之介は趣味というか、好きな事が他人と違う。そのマイノリティさを誰も理解できない。だから友達が少ないし、周囲の輪からはみ出す。
 イジメの対象にならないのは性格明るく社交的で、対するような真っ黒な部分が同居しているから。ようするに危ないヤツと周囲に思われている。
 ちなみにそんな龍之介のダチやってるオレも充分変な人扱いだ。
 別におかしな趣味を持つ龍之介のダチだから色眼鏡で見られているわけではなく、オレ自身が異相だからだ。
 まず。オレと初対面であった人間は大抵目を逸らす。人間、直視したくないモノから目を背けるように。
 生まれた時は珠のような子供のオレだが、十歳の時の事故が原因で顔に傷を負い、片目を潰した。
 そのショックで髪から色が抜け落ち、まるで老人だ。
 色がないというだけで、オレの頭部はスキンヘッドやモヒカンに負けない大インパクト。白髪で片目の高校生だ。目立たないわけがない。
 外見は奇抜なオレだが中身はいたって凡庸だ。
 おかしな趣味も嗜好もない。しかし。
 凡庸と自身を評したオレだが、実は一つ当て嵌まらない部分がある。
 それは。
 
 前世の記憶がある。という事だ。
 自分で言ってどん引きだ。
 中二病のごとき発言だが事実だ。
 オレ……間桐雁夜には二つの記憶がある。
 一つは、生まれてから十六年分の長くて凡庸なそれ。 もう一つは。
 間桐というおぞましい魔道の家に生まれ育った三十年分の記憶。
 オレは以前、間桐雁夜という魔術師だった。



「みったせーみったせーみったせーみったせー(閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ)くり返すつどにー……あいてっ!」
「バカ、止せ! 何言ってんだよっ!」
「何なんだよ、いきなり殴るなんて酷いぞ、雁夜!」
 後頭部を遠慮のない一撃で叩かれた龍之介が頭を押さえて睨むので、オレも睨み返す。
「おかしな(不吉な)歌を歌うな」
「なんでー? オレこのフレーズ大大だーい好きだよ。旦那に会えた記念のハッピー呪文だもん。雁夜も知ってるフレーズでしょ?」
 龍之介が機嫌よく同意を求めるが、とても同意できない。
 ニコニコと邪気のない微笑みには幸福以外の何物も見えず、悪意も作為も奸計も対極にある印象だが、その実この少年と旦那と慕う男が元殺人鬼である事をオレは良く知っていた。
 見た目というのは本当に大切だと思う。直視し難い醜悪な悪意も殺意も何もかも、明朗と無悪意という外見に蓋をされて表に出てこないのだから。
 龍之介を羨ましいとは思わないが、己の醜さと比較して辛くなる。
 自分の心が醜いから外見もそれに添う形になったのだと、左目が見えなくなり顔に傷が残った後、鏡を見て思った。
 そう思い込まなけれ十歳のオレは耐えられなかった。そして耐えられないオレの両親はオレから顔を背けた。
 殺人鬼龍之介は傷一つな美しい顔で、思い出したくもない呪文を気軽に口ずさむ。
 英霊召喚呪文。
「オレにとっちゃ呪いの言葉だ。他に聞かれたら面倒だ」
 吐き捨てた。
 トラブルを引き寄せるような事は口にするなと龍之介を睨んだ。
 ただでさえ顔半分を動かせない(麻痺してるから)オレが表情を消すとそれは恐ろしい顔になるらしく、すれ違った女子が顔を引き攣らせその場から駆けていく。
 オレの異相を全く気にしない龍之介は、アイスが溶けるような甘い顔で言葉を転がすようにクスクス笑う。
「雁夜は相変わらず真面目だなあ。もし万が一、知ってるやつに聞かれたとして……関係者に出会ったとしてそれが何? 何か困る事でもあるの? 聖杯も魔術師もいないこの世界には敵もいないんだろ? それとも何の目的もなく、殺しあいを始める? 雁夜がかつてあのうっかり優雅にしたみたいに?」
「……っ!」
 思わず足が止まった。
 見えないナイフをオレを刺す。
 無神経と悪意と無邪気が無理なく混合する友が疎ましかった。
 龍之介に悪意はない。
 存在自体が悪意そのものみたいな稚気全開なこいつは子供と同じだ。悪意なく羽虫の羽を引き千切る。蟻地獄の中に蟻を放り込む遊びに興じるガキに悪意も殺意もないように、龍之介の振う有形無形の刃にマイナスの感情はない。
 振りまく言葉に他意も悪意も作為もなく、時々こうしてオレの胸を無形の刃で切り裂く。
「……あいつの名は出すな」
「名前は出してないよ。雁夜が嫌がるからね。だから徒名だけ」
 うっかり優雅、というあまりにもぴったりな徒名をつけられた遠坂時臣という男は他の学校に通っているから、顔を合わせる事は殆どない。
 なのにどうして龍之介がオレと時臣の関係を知っているかといえば、持ち前の好奇心と行動力で調べたからだ。
 悪意無い龍之介は他人の一番触れて欲しくない所に土足で足を踏み入れる。好奇心という他意が結果悪意のように他者に痛みを与える。
 本来なら激昂して怒るべきなのだろう。
 しかしオレは怒らなかった。
 腫れ物に触れるようにこわごわ接してくる周囲の見えない壁にうんざりしていたからかもしれない。
 龍之介には壁も悪意もなく、ただただ表しかない。
 それがどんな酷い表でも。嘘も欺瞞もないその姿勢はオレが望んでもできない生き方で、だから龍之介の無礼をオレは受け入れるしかなかった。
「みったせーみったせーみったせーみったせー」
「だからそれ止めろ!」
「満たされる時を破却する〜」
 オレはフルスイングで龍之介の後頭部をブッ叩いた。











■sample/02■

 放課後用があるのは図書館くらいだ。
 借りた本を返し、新しい本を数冊借りて後にする。
 早めに寮に戻ろうと階段を下りていくと、背後からバタバタ駆けてきた数人の女生徒に追い越された。
「早く早くっ!」
「待ってよ」
「もう、遅い! 置いてくわよ。遅くなったら見る場所なくなっちゃうじゃない」
 騒がしいなあ、一年か? と階段を跳ねるように下りていく後輩の背を見送る。
 そんなに急いで何処へ行くのだろう。遊びに行くのだろうか。それとも部活か。何にせよ早々に学校に馴染んでいるらしい。
「アルトリアさんとランス君の試合だなんて、見逃したら泣くわ」
「だから急いでるんじゃない」
「出入り口はきっと埋まってるから、上に行こ」
 なるほど。彼女達は剣道場に見学に行く途中らしい。
 出てきた名前に聞き覚えがあった。
 先ほどクラスメートが話してきた名前。今年ピカイチの新入生。華々しい容姿と飛び抜けた資質にすでに上級生の間でも名前が売れている留学生。
 フユキ高校は海外と積極的に交換留学を行っている。だから学園には金髪や赤毛の生徒が珍しくないし、たまに会話に英語が飛び交っている。髪型に規制などない留学生達は長髪やドレッドやスキンヘッドと髪型はフランクだ。海外では日本のように服装規制がない。せいぜいチューブトップ禁止なくらいだ。数多の人種が集う場所で細かい規定を作ればそこから逆に歪みが生まれる。
 そんな環境だからオレの白髪もなんとなくそんなものだろうと容認されている。
 オレが道場に足を向けたのは気まぐれだ。
 時間が余ったから。やることがなかったから。評判の留学生が見たかったから。
 明日、クラスメートに例の留学生を見たぜと報告する為。
 剣道場の出入り口は四方にあるが、どこも女生徒で埋まって隙間がない。入る前に諦めかけた。
 オレは女生徒の塊を前に途方にくれ、ようやく階段上に狭いスペースを見つけ、そこに移動した。
 道場で面をつけた剣道部員達が打ち合っている。竹刀を打ち合う音と叩き付けるような足音が激しく響く。
 くだんの留学生達は面をつけていても何処にいるか、探さなくてもすぐに分った。
 剣筋が違うからだ。
 オレには剣道が分からないが、素人目でも飛び抜けているのが分った。
 型通りに打ち合う部員と一線を画す空気を切るような鋭利な打込みはどう見ても実践型だった。
 サーヴァントの戦いを見たから分かる。ただの試合と殺し合の違いが。これは明らかに後者のものだ。なんでただの高校生がこんな剣筋をしているのか分からない。
 防具をつけているとはいえ、鞭のようにしなる竹刀の威力は当たれば骨まで砕けそうな気迫が込められている。あれでは普通の部員では相手にならない。当たれば防具をつけていても怪我を免れないだろう。
「すっげえ…」
 思わず漏れる。
 龍之介がいたらCOOL! と煩かったに違いない。
 なんでこんなに強いのか。そして気迫が違うのか。
 見愡れると同時に、なんとなく不安になる。
 どうしてそんな風に思うんだろうと不思議だった。周囲を見ると別格の二人の剣技にただただ見蕩れている者達ばかりだというのに。見学しているのは女子ばかりではない。迫力ある一戦に格闘技の観戦の興奮を味わいたいと、男子も結構な数の観戦者がいる。
 その中でおかしいと思っているのはオレだけらしい。
 時間にすればあっという間だったのだろう。手に汗握る一戦はすぐに終わった。
 日本の剣道は三分と対戦時間は短い。練習となれば更に短い時間の打ち合いを何度も重ねる。
「休憩!」
 部員達が座って面を解く。
 現れた顔に女生徒の溜息と悲鳴が上がる。
 神聖な道場がの空気が浮ついて落着かないが、それを部員達は不満に思っていないらしい。さもありなん。
 面を外した下にあった顔は……人形のような美少女だった。あまりに完璧過ぎて一瞬本当に普通の人間かと疑うくらい人としての隙がない。女の色がないその貌は一見すると少年に見えた。色香と共に全ての欲まで削ったようなその顔は、人の肉の生々しさを極限まで薄め、遠目に見ても芸術品のようだった。
 手ぬぐいを外すと金色の髪がはらりと頬にかかった。宝石のような碧の瞳は翡翠かエメラルドか。
 フッと。笑ったのか。緊張を解いた顔が打ち合った友の顔を見て笑う。
 お互い健闘したな、だがまだまだだと言うように。
 その柔らかい笑顔に観客達はメロメロになったが、オレは凍えた。
 まさか。そう思った。
 美しい、妖精のごとく美しい少女。
 苛烈さを内に秘め、気品を体現したようなその容貌と自信に満ちた姿勢をオレは知っていた。
 会った事がないのに知っていた。
「……セイバー?」
 思わず漏れた声。
 言って動揺する。
 聞こえるはずのないその声を拾ったのは金の美少女と隣にいる長身の男。
 男の顔は知らなかった。
 面を取った下は男にしては珍しい長髪で、だが白皙の美貌に絡む黒髪のほつれ毛のなんと妖艶で美しい事か。相手が同性だろうと感嘆の息を漏らすしかない。気品と意志を繊細な顔立ちの下に閉じ込めると、かくも憂いある美形が完成するのかと羨望の溜息しか出てこない。
 長身の男と目が合った。
 合うはずのない目が合った気がした。
 オレの顔を認めた男の目が見開かれる。
 咄嗟に顔を背けた。
 しまったと思う。同輩や先輩ならオレの存在を知っている。よくない意味でオレの容姿は目立つから。
 だが入ったばかりの一年生はオレの事をまだ知らない。若いのに白髪で、顔に傷がある先輩がいる事を知らないのだ。だからオレの顔を見た後輩達は一瞬ギョッとして、気まずげに目を逸らす。ごく見慣れた仕種だ。いちいち傷ついてなんかいられない。
 あの綺麗な後輩もオレの醜い顔に気付いて驚いたのだろう。気分を害したとしてもそこは我慢してもらうしかない。あと少し学校に馴染めばこういう先輩もいるのだと理解するだろう。
 それよりも。
 繊細な小鳥のごとき美の化身の少女が気になった。
 恋愛の意味ではない。
 あの少女の顔を今でもはっきり覚えている。
 忘れるものか。あんな存在感ある美形を見忘れるわけがない。
 たとえ生まれる前の事だとしても、聖杯戦争はオレの転機であり最後の生であり後悔の源なのだから。
「セイバー……なのか?」
 喉が詰まって声がうまく出ない。
 オレはあの顔を『セイバー』としてしか知らない。
 サーヴァントの正体も知らず、ただ小柄な金の美少女がアインツベルンの召喚した英霊だとしか認識してなかった。
 聖杯関係者は生まれ変わっている可能性が高い。
 分っていたのに突然現れた顔にオレは引っぱたかれたような気分になった。
 まさか年下として生を受けたとは思わなかった。
 オレの見間違いでなければあれは。
 間違い無く。
『セイバー』だ。
 元・英霊の少女。
 彼女も生まれ変わっていたのか。
 オレは顔を隠しながら階段を下りて、背を丸めて足早でその場を立ち去った。
 見られたかもしれない。だがセイバーはオレの顔を知らないはずだ。
 しかし生まれ変わった者同士は見ればそうと分かる。セイバーと面識はないが、目が合ってそうと分っただろうか。オレが聖杯関係者だと。
 まさかバーサーカーのマスターだとは思うまいが。
 龍之介のサーヴァントのジル・ド・レィが大人だったので他のサーヴァントもてっきりそうだと思っていた。なのに年近く生まれてきていたのか。
 留学生という事は、今までは外国にいたのだろう。
 あの金の髪は白きアルビオンとコッツウェルの碧こそ相応しい。猥雑なこの国にあの清廉さは眩しすぎて似合わない。
 なぜこの地にきたのだろう。聖杯の差し金か。
 あのサーヴァントは聖杯に何を願ったのだろう。
 記憶はあるのだろうか。
 何かが起こりそうな気がして、嫌な予感に背を震わせた。







■sample/03■

「……なんで……おまえがオレの部屋にいるんだ?」
「マスターと話がしたいからです。外で待っていては目立ちますから。窓から入らせていただきました」
 この部屋は二階あるのに。元サーヴァントからすれば大した事ではないのかもしれないが。
 不法侵入を責めるより、疑問が先に立った。
「話がしたいのなら。セイバーと一緒にくれば良かったのに」
「王のいない場所で話したかったのです。いけませんか」
「いけなくはないけど」
 どうしよう。なんとなく気まずい。
 セイバーは明確で分りやすかったが、ランスロットは何を考えているのか全然分からない。顔に表情が乏しい。オレ以上に顔の表情筋が動いてない。
 分からないなら聞くしかない。
「……オレと何を話したいって? 聖杯戦争の恨み言なら聞くけど。オレはマスターとしては最低だったし、途中で魔力切れしてフェイドアウトなんて酷かった。怒ってるならちゃんと謝る」
「その事はいいのです。あなたはあなたの精一杯を生きた。己の命のすべてを魔力へと還元して命つきた雁夜をどうして責められましょう。英霊としてのわたしはあなたを恨んではいない」
「なら。……何を話に来たんだ?」
 わざわざ来た意味が分からない。話なら学校ですればいいのに。セイバーに聞かれたくない話なのだろうか。
「雁夜」
 近付くランスロットが何故か恐いと思った。けれど逃げる理由がない。
 間近で見るランスロットは本当に美しかった。セイバーとは種類が違うが、美は甲乙つけ難い。ギネヴィアという女性が惚れるのも分かる。オレが女だったら一瞬でこいつの虜だろう。
 憂いを秘めた眼差しが神秘的で、そういえばランスロットは妖精に育てられたのだと思い出す。白い肌は絹のように滑らかで繊細な顔立ちをしているのに、どこまでも男の匂いだ。
「雁夜」
「うん」
「わたしはあなたに会いたくなかった。あなたに会ってから……わたしと王は……アルトリアとの間に溝ができてしまった」
 いきなり責められた。
 そんな事を言われても困るが、誰にも愚痴を溢せないランスロットがオレに当っているのだと思えば、腹も立たない。ヤツ当りも甘えの一種だ。
 なんだか珍しいものを見ている気がする。
「わたしは……。ずっと王の側で幸福だった。なのに。あなたに会ってから……王と話せない。あの人の目が見られない。それが辛い。雁夜のせいです」
「そうだな。オレのせいかもしれない」
 オレのせいでなくてもオレがきっかけだ。
 ランスロットは瞼を伏せた。ほんの少しの動作が優雅で人間離れしている。
 美しすぎる男の顔は別の意味で直視できない。
「……分ってます。雁夜は何も悪くない。同じ学校にいるんです。いつかは顔を合わせる事になったでしょう。でも……。わたしは辛い。ただ悲しいのです。なぜこんな事になってしまったのかと」
「………………ランスロット」
「助けて下さい雁夜。わたしのマスター。あなたはわたしのマスターなのでしょう?」
「今はもうマスターじゃない」
「わたしはあなたの命で戦った。望むように剣となり盾となりました。今度はあなたがわたしを救って下さい」
 そう言われても。
「……方法が分からない。手を貸したいが、おまえらの間に入れるとは思えない」
「わたしは………独りです。王も独り。わたし達は互いに手を取り合って孤独を耐えた。でも今あの人の手をとれない。その資格がない。王を独りにしたくない。でもできないのです。わたしは……罪人です。罪人は王の手をとれないのです」
「ランスロット。おまえは罪人じゃないよ。セイバー自身がそう言ってる」
「王が許してもわたしは自分が許せない。許せないのです。……こんな思いをさせる雁夜が憎い。あなたは悪くない。でも憎いです」
 静かで優しい声がオレを責める。
 激昂していたなら。悪意があったなら。ただの八つ当たりであったなら。
 オレは手など伸ばさなかっただろう。
 美しい人間が嘆いている。オレに助けてくれと手を伸ばす。
 途方にくれた子供のようにすがりついてくるランスロットを振り払う事ができなかった。
 キスが降ってきて、抱き締める腕に別の作為を感じて振り払おうとしても、見上げるランスロットの壊れそうな瞳を見ると罪悪感で何一つ抵抗できなかった。








まだまだ続きます。
これからキャス組絡んだり、鈍感バサカと自虐雁夜がアレコレしたり、王様が部下に鉄拳とばしたり。
5/4 スパコミにて後半発行予定。